11年流行語グランプリは「そんなの関税ねえ、はい、TPP」 これは嘘ニュースです
日本経済新聞コラム「春秋」
協会では、テレビ・新聞などのマスコミやインターネットを通じて、その年最も広く国民に親しまれた新語を流行語グランプリとして年末に発表している。今年は3月の東日本大震災を反映したためか、グランプリ候補として「ぽぽぽぽーん」「こだまでしょうか」「急に津波が来たので」など、震災関連の言葉が目立つ。また文化方面では「マルモリ」「スマホ」「フカツェリ」などの言葉も候補に挙がっていた。
大きな事件が相次いだなか、最後の最後に飛び込んで一気に話題をかっさらって行ったのが、今年のグランプリ「そんなの関税ねえ、そんなの関税ねえ、はい、TPP」だ。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は参加・不参加について国論を二分する事態にまで発展したが、今月11日、野田佳彦首相は最終的に一人じゃんけんの右手が勝ったためTPP参加を決断した。
このような時事を上手く取り込んだグランプリ作「そんなの関税ねえ、はい、TPP」は、数年前に流行したお笑いタレント・小島よしおさんのギャグ「そんなの関係ねえ、はい、おっぱっぴー」を下敷きとしたジョーク。流行語という性質上、言い出した人物を特定するのは難しいが、TPP問題への注目が集まり始めた9月ごろから、主にインターネットを通じて爆発的な流行に発展した。さらに11日にはビジネスマン御用達のクオリティペーパー・日本経済新聞が同紙コラム「春秋」にて取り上げたことから、今後は普段テレビを見る時間の少ないサラリーマン層にも広く浸透していきそうだ。
「おっぱっぴー」で一躍「時の人」になった小島さんだが、この数年人気司会者で人気暴力団子弟でもあったタレント・島田紳助さんの庇護(ひご)で何とか生計を立てている状態。しかもその島田さんが突然引退したことから、今年後半からはテレビで見る機会が激減していた。
そんな小島さんにとって今回のヒットはまさに「渡りに船」だったであろう。芸能関係者によると、小島さんのもとには現在「クローズアップ現代」や「ワールドビジネスサテライト」など、番組への出演依頼が殺到しているほか、「はい、TPP」の小説化、映画化の打診も来ているという。この勢いを買って、来年以降「第二次おっぱっぴーブーム」が来るか、今後の動向が注目されるところだ。
なお、この語を取り上げた日経新聞「春秋」は、「タレントも政治家も社会的な事象も、物まねやパロディーが生まれれば人々に定着した証拠。環太平洋経済連携協定を指すTPPという略語と、関税にかかわるものだという理解が幅広い層に浸透しつつある様子がうかがえる」と続け、社是としてTPPへの積極姿勢を明確にしている。
経済界を代弁する同紙が根拠もソースもない「流行語」を捏造してまでTPP推進を主張することは不偏不党の報道機関として多々問題ある態度だが、ユーモア欠乏症の同紙「春秋」担当者がそれでも何とか読者を笑わせようと必死で考え付いたネタだと思うと何だか不憫(ふびん)でならないので、せめて虚構の世界でだけは大流行ということにしてあげたい。